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ディベロッパーダイアリー その5: 心を読む仕掛けとダークワールドが、Apopiaを可愛い冒険以上のものへと変えていった

ディベロッパーダイアリーその5: 心を読む仕掛けとダークワールドが、Apopiaを可愛い冒険以上のものへと変えていった

こんにちは。前回の開発日記では、Apopiaがどのように作られたか。アートスタイル、世界観、キャラクター、ゲームエンジンなどについてお話ししました。

今回は、もう少し“内部の仕組み”に踏み込んで、『ダークワールド』と、主人公マイの“心を読む力”である『マイトリック』の発想がどこから生まれ、どのようにして単なる機能ではなく、作品の核となっていったのかを説明します。

開発の初期段階から、私はプレイヤーに“深く掘り下げて”もらいたいと考えていました。それは、世界の背景設定を深く掘り下げることでもあり、キャラクターたちの心の奥にある秘密の領域を掘り下げることでもあります。

表面だけを見ると、Apopiaは明るく、かわいらしい世界です。
しかし、その下には別の層があります。そこへ踏み込んだとき、まったく違った景色が立ち上がるようにしたかったのです。この発想は、単にゲームシステムのためだけではありません。現実の人間関係に対して私自身が感じてきたことが大きく影響しています。

人の心には、他者が簡単には触れられない領域があります。そして、現実で最も痛みを生むのは、むしろ“言わないままの気持ち”だと、ずっと感じてきました。

たとえば、
「自分は十分ではない」
「本当は愛されていない」
「謝りたいのに言えない」
こうした思いは、心の内側に静かに留まり続けます。

そこで、私は考えました。もしゲームの中で、その“言葉にならなかった思い”の中へ、文字どおり足を踏み入れられたらどうだろうか?

こうして、マイが他者の心を読み取る力『マイトリック』が生まれました。しかし、ここで大きな課題がありました。心を読む力を、ただの仕掛けや便利なシステムで終わらせない方法は何か。

単にヒントを表示するスキャン機能にするのではなく、ストーリーと密接につながる体験にしなければ意味がありません。そのため、心を読む行為はパズルを解くだけでなく、キャラクターの“見え方そのもの”を変えるように設計しました。表で語る言葉と、心の中で抱えているものが噛み合わないキャラクターもいます。そして、こうした“心の中の世界”を、テキストではなく“空間”として表現することにしました。
これが『ダークワールド』の起源です。

ダークワールドは単に“怖い場所”ではありません。記憶や感情から立ち上がる、心の構造を具現化した場所です。マイトリックによって、プレイヤーはその内部へ実際に入り込むことができます。ダークワールドのデザインは、多くの試行錯誤の連続でした。
キャラクターごとにまったく異なる形を持たせる必要があり、分かりやすすぎて安易なホラー表現になってしまうこともあれば、逆に抽象的すぎて理解が難しくなることもありました。

度重なる調整の末、目指したのは次のような感覚です。完全には理解できなくても、このキャラクターが何を抱えているのか“感じ取れる”。正直に言えば、この仕組みをつくるのは効率的ではありませんでした。単純でかわいらしい冒険ゲームとしてまとめることもできたはずです。しかし私は、表面の物語をなぞるだけでなく、プレイヤーに心の中を歩き、恐れを見つめ、なぜそのキャラクターが“今の姿”なのかをゆっくり理解していく体験を用意したかったのです。それが、私自身が遊びたいと思うゲームであり、同じように感じてくれる人が必ずいると信じているからです。

プレイを終えたとき、パズルだけでなく、登場人物たちに対して抱いた感情が記憶に残る、そんな作品でありたいと考えています。そして、もしあなたがプレイしているときにそう感じてくれたなら、私たちの目指したことは達成されたと言えると思います。

 

Onon

Apopiaディレクター